2018年8月1日制作

「債務」とは、契約にもとづいて、取引相手に対して金銭を支払ったり、商品を引き渡したりする義務のことです。「債務不履行」とは、この義務を果たさないことを意味します。3種類に分類できる債務不履行それぞれの特徴や、取引相手が債務を履行しない時、どのような対応が可能なのか、みていきましょう。

債務不履行とは債務を果たさないこと

債権・債務の意味

「債権」「債務」という言葉は、あまり日常会話で使うものではありませんが、会社を経営するにあたっては頻繁に耳にするものでもあります。債権・債務を例に挙げて説明します。販売店Aが、メーカーBから商品を仕入れます。販売店Aの観点からすると、「代金を支払う義務」が「債務」で、「商品を受け取る権利」が「債権」です。反対にメーカーBにとっては、「代金を受け取る権利」が「債権」で、「商品を引き渡す義務」が「債務」ということになります。

債務不履行とは契約した債務を果たさないこと

同じ例でみると、販売店Aは、代金を支払う義務があるにもかかわらず支払わなければ、債務不履行になります。メーカーBは、約束の商品を渡さなければ、それが債務不履行に相当します。「債務」を「履行」しない、すなわち、債務を果たさないことが「債務不履行」です。わざと支払わない「故意」の場合も、悪意はないが支払うのをうっかり忘れてしまった「過失」であっても、どちらも債務不履行であることに違いはありません。

3つに分類できる債務不履行の種類

期日が過ぎても履行しない「履行遅滞」

債務不履行はその状況によって3つの種類に分類することができます。まずひとつ目は、「履行遅滞」。債務を履行することができたはずなのに「遅滞」してしまうこと、すなわち、約束の期日に遅れるのが履行遅滞です。上の例でいうと、販売店Aには支払い能力があったのに、履行期(支払期日のこと)を過ぎても支払いを行わなかったというケースがこれに当たります。

債務の履行が不可能、「履行不能」

債務を履行することが不可能になったケースは「履行不能」に分類されます。住宅メーカーが家を建てて販売契約を結んだが、思いがけない火事で燃えてしまい、購入した人に引き渡せないといった場合が「履行不能」に相当します。金銭の支払いや借入金の返済といった「金銭債務」については、どのようなケースでも「履行不能」とみなされないことに注意が必要です。住宅であれば火事によって建物そのものがなくなりますが、金銭の存在はこの世からなくなることはないというのが、その理由です。金銭債務の債務不履行は「履行遅滞」として扱われます。

部分的な不履行、「不完全履行」

債務の完全な履行はできなかったが、その一部を履行した場合は「不完全履行」になります。仕入れた商品の一部が壊れていて売物にならなかった、調査レポートが納品されたが間違いや情報不足がある、運送業者に引っ越し作業を発注したら扱いが乱暴で家財が破損した、といったケースが不完全履行に当たります。支払いの一部が滞っているといった金銭債務の部分的な不履行については、不完全履行ではなくて、「履行遅滞」とみなされます。

債務不履行が生じた際、債権者の取りうる選択肢

債権者にできること

期日を過ぎても代金を支払ってもらえない、約束した商品が納品されない等、債務不履行が生じた場合、債権者は損害を受けることになります。損害額をできるだけ少なく抑えたり、損害を取り戻したりするため、債権者はどのようなことができるかみていきましょう。

契約の解除

債権者にできることのひとつは、「契約解除」です。「契約」には法的拘束力がありますので、一方的な都合で解除することは認められませんが、債務不履行が生じていれば契約解除も選択肢になります。契約解除についてあらかじめ定めのある場合や、当事者同士で合意した場合、民法の規定により解除できる場合、契約解除が可能となります。

損害賠償の請求

債権者は、債務不履行となった相手に「損害賠償」の請求を行うことができます。契約違反や不法行為によって受けた損害を、その原因をつくった者が、損害を受けた者に対して埋め合わせするのが損害賠償です。商品を納入したのに代金が支払われないというケースでは、売買契約における一方の義務を果たしていないため、損害賠償を請求することができます。基本的に、請求できるのは相手が契約を遵守しなかったために受けた「実損害」のみです。特別に取り決めをしていなければ、慰謝料や迷惑料を請求することはできません。

強制執行

債権者が債務者に対して訴訟を起こし、勝訴判決が出たにもかかわらず、債務者が債務を履行しない場合、国の力を借りて強制的に債権を回収することができます。強制執行手続を申し立て、債務者の財産を差し押えるといった方法で債権を回収します。これが「強制執行」です。差し押さえ対象となる相手の財産は債権者自身で見つける必要があり、債権の全額回収が保証されているわけではありません。

まとめ

事業経営を続けていれば、取引先が債務不履行に陥り損害を被ることがあるかもしれませんし、自分が契約を守れない状況になることもあるかもしれません。そのような時は、まずは話し合いながら誠実に対処していくことになるでしょうが、それでも解決できない時は、民事訴訟や強制執行といった手段があることを覚えておきましょう。