2018年8月1日制作

手持ち資金が不足し、経営が継続できなくなった状態を「倒産」と呼びます。倒産するのは赤字の会社だけではありません。黒字決算で利益が出ている会社が倒産する「黒字倒産」も、決してめずらしいものではないのです。黒字倒産とはどのようなもので、何が原因となって引き起こされるのか、みていきましょう。

黒字なのに倒産する「黒字倒産」

どのような場合に倒産とみなされるのか

「黒字倒産」についてみる前に、「倒産」とはどのような意味なのか、確認しておきましょう。「支払いや返済に充てる手持ちの資金が足りなくなり、経営が継続できなくなった状態」、これを一般に「倒産」と呼びます。「倒産」は法律用語ではないため、定義が明確でない面もあるのですが、銀行取引停止処分を受けたり、会社更生手続き開始を申請したりすれば、その会社は倒産したとみなされます。「経営破綻」という言葉も同じ意味で使われています。

黒字・赤字それぞれの意味

損益計算書上で利益が出ている状態を「黒字」、損失が出ている状態を「赤字」と呼びます。簿記において、黒字でプラスの額を、赤字でマイナスの額を帳簿に記入することから、現在のような意味を持つようになったといいます。よく耳にする言葉ですが、どちらも会計用語として正式なものではありません。

黒字なのに倒産する黒字倒産

損益計算書上は黒字なのに倒産すること、それが「黒字倒産」です。利益が出ていれば経営は順調にみえるかもしれませんが、それでも倒産することがあります。ある調査によると、倒産する会社の半数程度は黒字だといいます。その一方で、決算が赤字であっても倒産することなく、経営を続けている会社も存在します。

黒字倒産が起きる理由

手持ち資金が把握できていない

黒字でも倒産することがある理由として、手持ち資金がいくらあるのか把握できていないことが挙げられます。損益計算書の利益額をみても、手元に資金がいくらあるかはわかりません。掛取引や減価償却といった会計上のルールのため、両者は一致しないからです。手持ち資金が把握できていなければ、利益の出ている状態であっても、支払い等に用いる資金が足りなくなり、黒字倒産に陥ることがあるのです。

掛取引という取引方法

商品・サービスを受け渡す時には代金の支払いが行われないで、期日までに後払いで支払う取引方法が「掛取引」です。商品を売る場合を考えてみましょう。商品の引き渡しのタイミングで売上を計上します。ですが、実際に売上金が手元に入るのは、取引条件によりますが、1ヶ月から数ヶ月先になります。掛取引があるため、損益計算書の売上と手元にある資金とに差が生じる大きな理由になっています。

減価償却も要因のひとつ

「減価償却」という会計上のルールも、利益と手元資金に差が生じる要因になっています。使用期間が長期に及ぶ設備や機材(工作機械や車両等)の購入について、支払いを一括で行ったとしても、損益計算書には複数の年度に分けて計上しなければなりません。たとえば、社用車を200万円で購入した場合、一括で支払えば、200万円の現金が1年目に出ていき、翌年以降、支払いは発生しません。ですが、損益計算書には、一般的な自動車なら5年間に分け、年40万円の経費を計上していきます。これにより、損益計算書と手元資金にギャップが生じることになります。

黒字倒産に陥りやすい経営状態

黒字倒産を避けるために気を付けたいのは、掛取引の条件です。この条件が不利なものであれば、キャッシュフロー面でデメリットが大きく、黒字倒産に陥りやすくなるといえるでしょう。買掛金の支払いがすぐにやってくる(キャッシュアウトが早い)のに、売掛金の入金が何ヶ月も先(キャッシュインが遅い)といった条件であれば、改めたいところです。また、設備や機材の購入に大きな費用を投じていると、減価償却によって損益計算書では経費が複数の年度に分散するため、利益が出ているようにみえても、実際は手元資金が少なくなっているため、資金繰りに注意が必要です。

赤字でも倒産しない会社

決算が赤字でも倒産しない条件

黒字でも倒産する会社がありますが、一方では、赤字続きでも倒産しない会社も存在します。赤字なのに倒産しない最大の理由は、保有している現金が十分であることが挙げられます。支払いや返済に充てる現金を十分に持っていれば、決算が赤字でも倒産することはありません。もし手持ちの現金がそれほどなかったとしても、不動産等の資産があれば、それらを担保に融資を受けて資金繰りが可能ですので、やはり赤字でもすぐに倒産することはないでしょう。潤沢な現金や担保になる資産がなくても、優れた技術があり、将来の成長が期待できるなら、投資家から出資を受けることで倒産を避けることができるでしょう。もちろん、赤字決算が長く続くようなら、使える現金や資産が年々減少していきますので、倒産リスクは徐々に高まっていくことになります。

まとめ

利益が出ている黒字状態であるのに倒産してしまう黒字倒産は、経営者からすると不本意で口惜しい事態に違いないでしょう。黒字倒産に陥らないためには、手持ちの現金がどれだけあるかを把握することが欠かせません。損益計算書をみるだけでなく、資金繰り表やキャッシュフロー計算書を日常的に更新し、必要に応じて早めに資金繰りを行うことで、思いがけない黒字倒産を避けることができるはずです。